ミスの正体
「あなたは目の前に見えている、すべてのものに意識を向けられていますか?」(前編)
施設長の花輪です。私が以前にアルファで行った講座を紹介します。
私は以前、航空機に携わる仕事をしていました。その時、仕事と常に隣り合わせにあったもの。それが「ヒューマンエラー」でした。これは「人が不注意や間違いによって起こしてしまうミス」のことです。私は仕事に携わる傍ら、この「ヒューマンエラー」の研究をしていました。航空機だけにとどまらず鉄道、車、船舶といった乗り物をはじめとして、遊園地の乗り物、医療、屋内外の作業におけるあらゆる事故を調べたり、実際に調査をしたりしていました。おまけに趣味である登山での事故研究も行っていました。これらの事故の内、その9割以上がヒューマンエラーです。つまりほとんどの事故が「人の勘違いや間違いなどによって引き起こされている」という事です。機械上のトラブルでも、もとをたどれば人が製造、整備、点検を行っています。ここで何かしらの間違いが起きれば事故につながります。
ヒューマンエラーが引き起こされる原因
ヒューマンエラーが引き起こされる特徴として以下のものが考えられます。
・人の記憶はいい加減
・人は思い込みをする
・人は間違いをする
・人は省略や手抜きをする
・人は自分が見たいものだけしか見えないことがある
・人は慌ててしまうことがある
・人は先を急ぐことがある
・人はついウッカリしてしまうことがある
・人は感情に走ることがある
・人は忘れることがある
・人はパニックになることがある
・人は気がつかないことがある
・人は一つのことしか見えない・考えられないことがある
どうでしょうか?この中でなにか思い当たるものはありますか?
「一つもない!」という方はこの先は読まなくても大丈夫です。完璧な人だからです。
「これは経験がある」という方、もしかしたらこれらのことが原因で過去にお仕事などでミスをしてしまった経験があるのではないでしょうか?
私の経験上、かつて多くの職場ではこの「ヒューマンエラー」を個人の問題としていました。分かりやすく言えば「ぼんやりしてるからだ!」とか「緊張感がないからだ!」というようにです。
ここでみなさんに二つのテストをしたいと思います。出来ればどれも10秒という制限時間を設けて下さい。
まず一つ目。
この中から一つだけ異なる数字を見つけて下さい。
二つ目。
イラストからすべての色の丸の数を数えて下さい。
さて、いかがでしたか?
「イラストや数字が紛らわしくて間違えちゃった」という方や「時間制限で焦って数え間違えちゃった」という方もいたのではないでしょうか。答えはぜひ後編で!
そもそも人はミスをする
お仕事で何かミスをしてしまうことがある場合(見落としや数え間違い)もこんなきっかけで発生することが多いです。これがヒューマンエラーです。しかし、これらは本当に「個人の問題」として片づけてしまってよいのでしょうか。「しっかりチェックしろ!」「気をつけろ!」といった注意で責任追及をしても、エラーが減少するのは一時的で、少し経つと同じ事故が再発してしまいます。
「過去に仕事でミスをしてしまい、それがトラウマで再び仕事に就くのが怖い」「また同じミスを繰り返してしまうんじゃないか」といったプレッシャーから、就労することに前向きになれない方は多いのではないでしょうか。私が長年の企業経験や研究の結果からアルファの皆さんにお伝えしているのは「ミスをしないスキルを身に付けましょう!」ということではありません。「そもそも人はミスをするものだ」という事です。
後編でもう少し詳しくお話します。
施設長 花輪