「グレーゾーン」は正式な病名ではない
発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の症状がいくつか見受けられていても診断基準の全てを満たしているわけではないため、発達障害であるとの確定診断を下すことができない状態のことを言います。
そのため、発達障害の「グレーゾーン」とは正式な病名ではありません。
あくまで「発達障害の傾向はあるが、発達障害であると確定診断を下すことができない状態」のことを言います。発達障害のグレーゾーンとは、医師から「発達障害の傾向はあるが、診断基準は満たしていません」といった形で伝えられることがほとんどです。
発達障害の「グレーゾーン」の方には、次のような症状があります。
私生活での症状
私生活での症状には、次のようなものがあります。
1.相手に不快感を与えることがある
他人と話をするときに、細かいところまで納得しないと理解することができないため、質問を重ね続け、相手に不快感を与えてしまうことがあります。
2.友人と疎遠になりやすい
知り合いと連絡先などを交換しても、自分からアプローチを行うことが苦手であるため、友人関係が築けなかったり、友人関係を長続きさせたりすることが難しいことがあります。
3.雑談についていけない
「グレーゾーン」の人の中には、他人の話を聞きながら自分の意見を考えることが苦手な方も少なくありません。そのため、雑談の途中で話を振られてもとっさに対応できないことがあります。
仕事での症状
仕事上の症状には、以下のようなものがあります。
1.仕事のイメージをうまくつかむことが難しい
指示されたことを想像して補うことが苦手であるため、指示された仕事のイメージをうまくつかめないことがあります。
2.指示を理解しづらい
「簡潔にまとめて」などと漠然とした指示をされた場合、何をどれくらい簡潔にまとめれば良いのか理解することが難しいグレーゾーンの方もいます。具体的な指示をする必要があります。
3.上手く段取りを取ることができない
焦って最後の確認を怠ってしまい、結果としてケアレスミスが多くなってしまいます。
そして失敗してしまうと、パニックになってしまう方も少なくありません。
発達障害の「グレーゾーン」の症状がある場合の対処法はあるのか
ここでは、「グレーゾーン」の方への3つの対処法について解説していきます。
1. 傾向があると言われた発達障害の特性への工夫を参考にする
医師から「傾向がある」と指摘された発達障害の特性について調べ、仕事などを行う上で困りごとが出てこないように工夫を実践することをお勧めします。
例えば自閉症スペクトラム障害の傾向があるグレーゾーンの人の場合には、思ったことを実際に口に出す前に一度考えたり、質問して確認したりする習慣を身につける、相手が怒っていてその原因が分からない時には第三者に指摘してもらうように頼む等し、ご自身の特性を理解することが大切です。それ以外の発達障害の傾向があるグレーゾーンの人の場合でも、その発達障害の傾向に応じた対処法を行うことで、一般の方と同じ職場で困りごとを少なくして働くことが可能になります。
2. 二次障害の症状がないかを確認する
発達障害を持つ方は、その障害の特性から「生きづらさ」を感じていることが多く、そのため二次障害としてうつ病などの精神病を二次障害として患うことも少なくありません。
このような二次障害は、グレーゾーンの方にも現れやすいという特徴があります。
うつ状態が続いたり、睡眠が上手くとれないなどの症状がある場合には、早めに精神科や心療内科を受診し、二次障害が深刻にならないうちに治療を受けるようにしましょう。
3. 公的機関の支援を利用する
公的機関の中には、発達障害の診断が確定していなくても利用できるものがあります。
例を挙げると、発達障害者支援センターでは発達障害に関する相談全般に対応してくれます。この発達障害者支援センター以外にも、障害者就業・生活支援センターで仕事面と生活面の両方の相談に乗ってもらうことができます。
また、精神保健福祉センターでは、医師や精神保健福祉士、臨床心理士などの専門家が発達障害やグレーゾーンに悩む方の相談を受け付けています。このような公的機関の支援を利用することで、自分の持つグレーゾーンの特徴を正確に把握し、適切な対処法を身につけるようにしましょう。
発達障害の症状がある方に向いている仕事とは
発達障害の症状があるグレーゾーンの方には、向いている仕事と向いていない仕事があります。ここでは、グレーゾーンの方に向いている仕事と向いていない仕事について詳しく解説していこうと思います。
グレーゾーンの方に向いている仕事
ここでは、グレーゾーンの方に向いている仕事について解説していきます。
自閉スペクトラム症の傾向を持つグレーゾーンの方に向いている仕事
自閉スペクトラム症のグレーゾーンの方は、興味がある分野に関しては粘り強くとことんまで追求するという傾向があります。
そのため、デザイナーやエンジニア、エンジニアアナリストや研究者などの仕事が向いています。
注意欠如・多動症(ADHD)の傾向を持つグレーゾーンの方に向いている仕事
注意欠如・多動症(ADHD)の傾向を持つ方は、アイデアが豊富で好奇心があるという特徴があります。また行動力があるという点も、この発達障害が仕事上でプラスに働きます。
そのため、デザイナー、広告やゲームのプランナーといった業種の仕事が向いているといえます。
学習障害(限局性学習症)(LD)の傾向があるグレーゾーンの方に向いている職業
学習障害(限局性学習症)(LD)の傾向があるクレーゾーンの方は、能力に偏りがあるためどの職業が向いていると一概にいうことはできません。
学習障害の傾向がある方が向いている仕事を探す場合には、まず自分が読み書きや計算などの作業のうちどのような事が苦手であるかをしっかりと把握することが大切です。
グレーゾーンの方に向いていない仕事
ここでは、グレーゾーンの人に向いていない仕事について解説していきます。
自閉スペクトラム症の傾向を持つグレーゾーンの方に向いていない仕事
自閉スペクトラム症の傾向があるグレーゾーンの人は、興味がない分野に対しては集中力を保ち続けることが難しく、他人と円滑なコミュニケーションをとることも苦手なことが多いため、高いコミュニケーション能力やマルチタスク能力が要求される一般事務やテレフォンオペレーターのような仕事には向いていません。同じような理由で、接客業や販売業にも向いていないといえます。
注意欠如・多動症(ADHD)の傾向を持つグレーゾーンの方に向いていない仕事
注意欠如・多動症(ADHD)の傾向を持つグレーゾーンの方の場合、仕事をするうえで一番の障害となるのは、「不注意」という特徴です。
そのため、ちょっとしたミスが人の命に関わる医師やパイロットなどの職業には向いていないといえます。また、この発達障害の傾向として不用意な発言をしてしまうというものがあるため、営業や接客業なども向いていない仕事であるといえます。
さらにマルチタスクが苦手という特徴もあるため、一般事務の仕事も向いていないと考えられます。
学習障害(限局性学習症)(LD)の傾向があるグレーゾーンの方に向いていない職業
学習障害(限局性学習症)(LD)の傾向があるグレーゾーンの方は人によって苦手とする能力やその程度が異なるため、一概にどの仕事が向いていないと言い切ることはできません。しかし、物事の全体像を読み取る力に長けているという特徴があるため、細かい情報を読み取る必要がある仕事を苦手とする方が多い傾向があります。
発達障害の症状があるのに診断がおりない場合にはどのような理由がある?
発達障害の症状はあるのに、発達障害の確定診断がおりない場合もあります。
そのような場合は、体調が良い時に受診したため発達障害の診断基準をすべて満たさなかったというケースが考えられます。発達障害のグレーゾーンの方は症状に幅があるため、受診した時の体調によっては、症状の現れ方が軽かったり、または一部の症状が現れなかったりすると診断がおりません。また、発達障害の診断については、医師の問診の影響が大きいため、医師により判断が分かれることもあります。
このような理由から、発達障害の診断がおりずに「グレーゾーン」となってしまう人がいることもあります。
最後に
ここまで発達障害のグレーゾーンとその症状、対処法と向いている仕事・向いていない仕事について解説してきました。
発達障害のグレーゾーンは病名ではなくても、発達障害と同じような対処法が必要な事や、グレーゾーンの傾向によって向いている仕事と向いていない仕事があることがお分かり頂けたと思います。
発達障害のグレーゾーンの場合でも、発達障害と同様に「生きづらさ」を感じることがあるため、きちんとした対処法を知り、自分のグレーゾーンの傾向に向いている仕事を選ぶようにしましょう。就労移行支援事業所アルファ王子は障害者手帳をお持ちでなくても利用することが出来ます。お気軽にいつでもお問合せ下さい。ご連絡お待ちしております。
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サービス管理責任者 精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士 日高 晋資