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なかなか治らない”うつ病”(前編) -躁うつ病の正しい理解-

なかなか治らない”うつ病”、じつは『かくれ躁うつ病』かもしれません

今回は、前・後編で「うつ病と躁うつ病の違い」と「躁うつ病の正しい理解」、医師の診察を受けるときに注意する点についてお話ししたいと思います。

うつ病・躁うつ病の分類の違いについて

米国精神医学会が制定している診断基準DSM-Ⅴが発表されて以降、DSM-Ⅳに存在していた(うつ病、躁病、躁うつ病)を総称した「気分障害」という名称はなくなり、「双極性障害および関連障害群」、「抑うつ障害群」に分けられることになりました。
WHO(世界保健機関)の国際疾病分類第10版ICD-10では、気分障害は「気分(感情)障害」と呼ばれています。

大まかに説明すると、その気分(感情)障害のうち、うつの病相だけがあらわれるものを、「うつ病エピソード」、うつ病の再発をくりかえすと「反復性うつ病性障害」、その対極である躁の病相のみがあらわれるものを「躁病エピソード」と呼びます。そして、躁とうつをくりかえす躁うつ病を「双極性(感情)障害」と呼びます。
 ここで重要なことは、うつのみあらわれる単極性のうつ病と、うつと躁があらわれる双極性の躁うつ病は、DSM-Ⅴでも別のカテゴリーに分類されているように、病前性格からみても、両者はまったく異なる病気であるということです。

うつ病と躁うつ病の病前性格の違いとは

病前性格の違いとは、うつ病の患者さんは「意志が強く、責任感があり、ついがんばりすぎてしまうため、その徒労感からうつ病を発症する」のに対し、躁うつ病の患者さんは「もともと気分屋で気分の波が激しいとされており、特定の制約や目標設定を受けて仕事をさせられると、さらに気分の波が大きくなり、生活に支障が出るほど苦しくなり、発病する」傾向があるということが指摘されています。

躁うつ病への極性診断変更

 アキスカルは多くの潜在的なうつ病がもれ落ちてしまう事に対して懸念し、はっきりとした躁病エピソードまでには至らない「軽微な躁」も、積極的に「躁うつ病」を疑うべきであると指摘し、躁うつ病を双極Ⅰ型からⅣ型まで6つに分類しました。6つの病相を簡単にまとめると、次のようになります。

双極Ⅰ型 従来の典型的な躁病相のはっきりした躁うつ病
双極Ⅱ型 軽躁病を伴う“明るい”うつ病
双極Ⅱ1/2型 気分循環気質の“より暗い”うつ病
双極Ⅲ型 抗うつ剤治療によってのみ軽躁するうつ病
双極Ⅲ1/2型 アルコールや薬物乱用によって躁転するうつ病
双極Ⅳ型 発揚気質のうつ病

 軽微な双極性障害でうつ状態を呈していても、躁うつ病として気分安定剤を中心に治療しながら、治療経過を見た方が有益だと考えられています。

軽微な躁症状

 躁うつ病にあらわれる軽微な躁の症状は、診断が困難です。患者さん本人によっては違和感がなく、軽微な躁の状態を、”むしろ調子が良い”、”普段通り”と感じる場合がほとんどだからです。
 しかしながら、病前性格や、家族歴、躁転(うつから躁に状態がかわること)の既往が確認されれば、躁うつ病を積極的に疑っていいと思います。また、うつ病の経過としては不自然だと思われる場合には再度躁うつ病の可能性についてしっかりと考慮するべきであると考えられます。

治療中に「躁うつ病」と発覚することも

 実際に、単極のうつ病から双極の躁うつ病への極性診断変更は、決してまれではありません。単極性うつ病の患者さんのうち2~3割以上が、数年にわたる経過観察中に、双極Ⅰ型あるいはⅡ型に移行しているという報告もあるのです。つまり、はじめはうつ病に見えたのに、治療中に躁うつ病だったとわかるケースが、意外にたくさんあるということです。


 うつ病エピソードで発病すれば、最初はうつ病と診断され、うつ病が再発すれば反復性うつ病に診断が変わり、躁や軽躁のエピソードが出現すると遡及的(そきゅうてき)に診断が変わり、躁うつ病と診断された報告も数々あります。軽微な躁状態は、本人ではなく医師でないと分からないことも。しかしながら、軽い躁状態は患者さん自身も周囲の人も、病的な躁の時期だと自覚していない場合が多く、依存や浪費・借金などの逸脱(いつだつ)行為や、よほど顕著になった躁状態でない限り、誰も気がつかないことも多いのです。

 また軽微な躁状態では、”調子が良い状態”、”普段の体調が良い時”といった認識で本人も考えていることも多いために、医師との診察の経過を経て、「軽微な躁状態」と通院期間を重ねながら、医師の診察を通して判断されることもあるという事です。

躁うつ病の躁状態(さまざまな合併症)

 DSM-Ⅳの発表以来、躁うつ病の診断にさまざまな合併症が容認されるようになりました。アキスカルが提唱する「双極スペクトラム」では、躁うつ病には、抗うつ薬による躁転だけでなく、薬物やアルコールの依存関連障害、それに伴う躁転、ギャンブルなどの衝動制御の障害、過食や拒食などの摂食障害、パニック障害、不安障害、不安神経症、リストカットなどのパーソナリティ障害のような症状など、多彩な症状が共存することが示されています。さらに、躁状態とうつ状態の両方の特徴を満たす「混合状態」のときの不安焦燥感、不眠、摂食障害、自殺念慮、自殺企図や不機嫌な躁状態なども、極性診断変更時には重要な手がかりとなります。

 また、躁うつ病では過眠になり、夜中に活動する昼夜逆転が出現することもあります。極論をいえば、うつ状態で発症した患者さんが、治療中に先述したような症状がみられた場合、単極性うつ病以外の病気、すなわち躁うつ病を疑うべきだと思います。その一方で、パニック障害や不安障害、焦燥感、自殺念慮などは、単極性のうつ病でも見られることがあるため、十分な注意が必要です。これらの症状がうつ病からくるものなのか、躁うつ病からくるものなのかをご自身で見分けるのは、実は大変難しいです。
 そのために、医療機関などできちんとご相談をされることをおすすめいたします。

 ここまで、うつ病と躁うつ病の違いと、『かくれ躁うつ病』の可能性についてご説明してきました。後編では躁うつ病の症状や、診察を受ける際の注意事項についてお話ししたいと思います。
 ぜひ後編もあわせてお読みください。

 

就労移行支援事業所アルファ王子
精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士
サービス管理責任者
日髙 晋資

 

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